犬の訓練所に預けたのに

来客への飛びつきがひどく、ほかの犬と会うと狂ったように吠えて困っている、という相談を受けました。聞けば『ヘンリー』は、訓練所に預けられたことがあるそう。

お宅に伺ってみると、チョコレート色のトイプードルが、私に向かってワンワン吠えながら跳ねていました。やせ型のご主人が首輪を必死でつかんで押さえてくださっていました。

その様子には攻撃的な雰囲気はなく、どちらかというと喜んでいるように見えましたので、私はご主人に首輪を放すようお願いしました。ヘンリーはすごい勢いで飛びついてきて歓迎してくれました。飛びつかれるのが好きな私ですが、あまりの興奮ぶりに首輪をつかみ体重をかけて押さえようとしたら、すっとおとなしくなりオスワリをしました。一瞬にしてヘンリーは別犬になったのです。

これは訓練所での訓練の成果です。私が勤務していた訓練所にはトイプードルが十頭くらいいましたので、扱いには慣れています。ヘンリーは私の動きに、訓練所を思い出す何かを感じたのだと思います。しかし反面、力で押さえつけられるトレーニングを受けた場合、犬は訓練士の力に対しては従順になりますが、同じ力を出せない人に対しては、まったく言うことを聞かなくなることがあります。賢い犬ほどその傾向があるようです。

ヘンリーを預けた訓練所の先生は大柄な男性だったそうなので、きゃしゃな飼い主さんご夫妻の力には従わなくなったと考えられました。ちょっと不思議なのが、ヘンリーは家庭犬なのに、訓練所で攻撃訓練まで受けたそうです。その必要性が理解できないのですが、どおりで飛びつくのが上手なはずです。

ヘンリーには、「パワー・デトックス」が必要でした。まずは力のコントロールをやめて、力を使わないコントロ-ルカを高めるために、ベースプログラムに取り組んでもらいました。

数週間後、関係が改善され始めたのを確認してから、ジェントルリーダーを使用して散歩のトレーニングを始めました。散歩のトレーニングは、犬に引っ張られてしまう人にはできません。リードを持っている人を引っ張れると思うと、当然犬はその人を引っ張り、行きたいほうへ行こうとします。

まずふだんの様子を見せてもらうため、飼い主さんにリードを持ってもらいました。私はその様子をひと目見て、飼い主さんはヘンリーを押さえきれないことを理解しました。

案の定、天敵犬がいるという家の前を通りかかると、庭に放されている犬に向かってヘンリーはものすごい勢いで吠え始めました。その様子はかなり攻撃的で、相手の犬も攻撃的に吠えていました。柵とリードがなかったら危険な状態だと判断したのですが、飼い主さんはヘンリーを押さえられずに、どんどん犬がいる庭へ近づいていってしまいました。私は慌ててリードをつかみ、飼い主さんと交代しました。

リードに体重をかけるときにはコツがあります。ヘンリーは訓練を受けているので、リードさばきによって学習したはずの行動を引き出すことができます。そのスイッチは、ある程度の力とタイミングをつかめば簡単に入れることができます。それが訓練済みの犬の良いところでしょうか。