犬の散歩のコツ

前回話したヘンリーに進展がありました。

訓練所でのトレーニングを思い出してリードを引いてやると、あっという間にヘンリーは訓練モードに入り、上手に歩き始めました。

私はヘンリーとの会話が始まったのを実感しました。トイプードルくらいの大きさでしたら、長めにリードを持ち、リードの中間に手を沿えるようにして、少しでも勝手な動きをしようとしたら、リードを使って静止させるようにするとよいでしょう。

早く歩くと犬は興奮しやすいので、できるだけゆっくり歩きます。そうして歩いていると、数分もせずにヘンリーは落ち着きました。そこで、ヘンリーを連れて再び先ほどの家の前を通ってみました。相手の犬は激しく吠え、ヘンリーも応戦しようと前に出そうになりましたが、「ダメ!」と低めの強い声で制し、止めてやると、ヘンリーは自らこらえてくれました。

「いい子だ」と声をかけると、ヘンリーがパッと私の顔を見上げてうれしそうな表情をしました。訓練所でも、こうしてほめてもらっていたのでしょう。しかしいつものお散歩では、叱られることばかりだったかもしれません。ヘンリーはとてもほめられたがっているように感じました。

心が通じ合ってからのヘンリーとの散歩は、じつにスムーズでした。再度Uターンして、また先はどの犬の前を通りました。今度はヘンリーが反応する前に「ダメ!」と声をかけ、リードをしっかりと押さえながら歩きました。するとヘンリーは相手の犬にまったく反応せず、何事もなかったかのように歩き続けてくれたのです。

「よーし、いい子だ!」とうんとほめてやっておやつを与えると、ヘンリーはさらに変わりました。それからは満面の笑みで何度も何度も私の顔を見上げるようになりました。トイプードルのありがたいところです。そんなヘンリーを見て、飼い主さんは涙目になっていました。「後ろから見ていたら、ヘンリーががんばっているのがわかって……」。

引き続き私がリードを持ち、そのほか2軒ほど犬を飼っている家の前を通り過ぎましたが、ヘンリーはまったく反応せず、飼い主さんは何が起きたのか信じられない、という顔で、「えー、うそお!ホントに?信じられません!」と連発していました。もう私と歩いているときは吠えないでしょう。

次は、飼い主さんと歩いても吠えないようにコントロールしていかなくてはなりません。最初のステップとして、今後の散歩では、毎回一度も吠えずに家に帰ってこられるよう、できるだけほかの犬と出会わせないようお願いしました。庭先に犬がいるような家は避けて散歩し、飼い主さんと吠えずに散歩して帰ってくる、という成功体験を少しずつ積み重ねてもらうのが目的です。

トイプードルはもの覚えがいい犬ですがこのようなトレーニングは欠かせません。自宅で自分でできるトイプードルのトレーニングは「トイプードルのしつけ.jp」がとても参考になります。しつけで困っていたら一度見てみるといいかもしれません。

ヘンリーのトレーニングは、ただいま継続中です!

 

犬の訓練所に預けたのに

来客への飛びつきがひどく、ほかの犬と会うと狂ったように吠えて困っている、という相談を受けました。聞けば『ヘンリー』は、訓練所に預けられたことがあるそう。

お宅に伺ってみると、チョコレート色のトイプードルが、私に向かってワンワン吠えながら跳ねていました。やせ型のご主人が首輪を必死でつかんで押さえてくださっていました。

その様子には攻撃的な雰囲気はなく、どちらかというと喜んでいるように見えましたので、私はご主人に首輪を放すようお願いしました。ヘンリーはすごい勢いで飛びついてきて歓迎してくれました。飛びつかれるのが好きな私ですが、あまりの興奮ぶりに首輪をつかみ体重をかけて押さえようとしたら、すっとおとなしくなりオスワリをしました。一瞬にしてヘンリーは別犬になったのです。

これは訓練所での訓練の成果です。私が勤務していた訓練所にはトイプードルが十頭くらいいましたので、扱いには慣れています。ヘンリーは私の動きに、訓練所を思い出す何かを感じたのだと思います。しかし反面、力で押さえつけられるトレーニングを受けた場合、犬は訓練士の力に対しては従順になりますが、同じ力を出せない人に対しては、まったく言うことを聞かなくなることがあります。賢い犬ほどその傾向があるようです。

ヘンリーを預けた訓練所の先生は大柄な男性だったそうなので、きゃしゃな飼い主さんご夫妻の力には従わなくなったと考えられました。ちょっと不思議なのが、ヘンリーは家庭犬なのに、訓練所で攻撃訓練まで受けたそうです。その必要性が理解できないのですが、どおりで飛びつくのが上手なはずです。

ヘンリーには、「パワー・デトックス」が必要でした。まずは力のコントロールをやめて、力を使わないコントロ-ルカを高めるために、ベースプログラムに取り組んでもらいました。

数週間後、関係が改善され始めたのを確認してから、ジェントルリーダーを使用して散歩のトレーニングを始めました。散歩のトレーニングは、犬に引っ張られてしまう人にはできません。リードを持っている人を引っ張れると思うと、当然犬はその人を引っ張り、行きたいほうへ行こうとします。

まずふだんの様子を見せてもらうため、飼い主さんにリードを持ってもらいました。私はその様子をひと目見て、飼い主さんはヘンリーを押さえきれないことを理解しました。

案の定、天敵犬がいるという家の前を通りかかると、庭に放されている犬に向かってヘンリーはものすごい勢いで吠え始めました。その様子はかなり攻撃的で、相手の犬も攻撃的に吠えていました。柵とリードがなかったら危険な状態だと判断したのですが、飼い主さんはヘンリーを押さえられずに、どんどん犬がいる庭へ近づいていってしまいました。私は慌ててリードをつかみ、飼い主さんと交代しました。

リードに体重をかけるときにはコツがあります。ヘンリーは訓練を受けているので、リードさばきによって学習したはずの行動を引き出すことができます。そのスイッチは、ある程度の力とタイミングをつかめば簡単に入れることができます。それが訓練済みの犬の良いところでしょうか。

 

犬と赤ちゃんの関わり方

前回のトイプードルのライルの話の続きになりますが、奥さんには、赤ちゃんが起きているときにライルをかまってあげるようにお願いしました。

赤ちゃんが寝ているときは、可能であればお母さんもライルも一緒に寝るようにお願いしました。これは、ライルに「赤ちゃんが起きているのは楽しい」と学習してもらうためです。起きているときはかまっでもらえないとなると、ライルにとっては「赤ちゃんが起きると楽しくない!」という学習になってしまうのです。

赤ちゃんの世話をしながらライルをかまうのは大変かと思いますが、何も一生懸命遊んであげなくてもよいのです。たとえば赤ちゃんを抱っこしながらライルに話しかけたり、アイコンタクトをして「オスワリ」など指示を出してやり、できたらおやつを床に落としてやる、それだけでもいいのです。

おむつを替えるときも「赤ちゃんのおむつを替えるよ。ライルも手伝ってね」と声をかけ、足元にオスワリさせてやります。おむつ交換が終わったら、おやつをあげてください。

おっぱいやミルクをあげるときは、ライルも横にオスワリさせて、またおやつを。そうすることで、ライルは自分が除外されるのではなく、赤ちゃんの世話に一緒に参加していると実感するでしょう。

ライルと赤ちゃんの関係を良くするために、ライルが赤ちゃんを見たり、ニオイを嗅いだりして赤ちゃんに興味を示したら、やさしい言葉をかけてよくほめて、おやつをあげます。そしていちばん大事なことは、ライルに赤ちゃんを守ってくれるようお願いすることです。動物には、幼い個体を守ろうとする本能があります。言葉は理解できませんが、気持ちは伝わると、私は信じています。

赤ちゃんが泣いたときにびっくりして吠えてしまう犬もいると思います。そんなときは「赤ちゃんが泣いたね」と、ハッピーな声色
で犬に話しかけ、おやつを与えてください。最初は犬が吠えていてもかまわずにおやつを与えましょう。「赤ちゃんが泣く。おやつがもらえる」と学習したら、赤ちゃんが泣くとオスワリしておやつを待つようになります。

飼い主さんにこれらのルールを実施していただいた結果、赤ちゃんがハイハイするようになったころにはライルは喜んで赤ちゃんのそばに行き、やさしく寄り添って飼い主さんを見るようになりました。もちろん、おやつが欲しいからなのですが、その姿はとても愛おしいと思います。

赤ちゃんが成長すると、ピクピク動くしっぽが気になってつかもうとしてみたり、フサフサした毛の中にあるキラリと光る目玉をつつこうとしたり、いろいろ災難もあったようですが、ライルは上手に逃げているそうです。

子どもが立ち上がり、歩いたり走ったりするようになると、犬は楽しくて飛びついてしまうこともあります。そういうときには「オスワリ」、「マテ」の指示を出し、じっと我慢できるようにトレーニングをしてください。

子どももキャーキャー言いながら走り回ったりしない方がいいのですが、そちらのほうが犬のしつけより大変そうです(苦笑)。

なお奥さんによると、「ライルは子育てを大いに楽しんでいるようです」とのことです。

 

犬も子供や赤ちゃんを育てたい

トイプードルの『ライル』はずっと「ひとりっこ犬」として飼われていましたが、4歳になったとき飼い主の奥さんに赤ちゃんが生まれました。ライルはとてもいい子でしたが少々元気すぎて、走り回ったり飛びついたりすることもあるので、飼い主さんは赤ちゃんとどのようにかかわらせればよいのか悩んでいました。

お宅に伺ってみると、何かあったら怖いということで、リビングをソファで半分に仕切り、片方を赤ちゃんのスペースに、もう片方をライルのスペースにしていました。奥さんが赤ちゃん側のスペースに行くと、ライルはすごく吠えるそうです。私が伺ったときも、ライルは赤ちゃんのいるスペースに行きたくて、一生懸命ジャンプしながら吠えていました。

ライルがどんな風に赤ちゃんと接するのか観察する必要がありましたので、十分注意をしながら、奥さんに赤ちゃんを抱っこしてもらい、ライルを赤ちゃん側のスペースに入れていただきました。興味津々のライルは、少しでも赤ちゃんに近づきたくてジャンプ!奥さんはびっくりしてライルを叱り、慌てて赤ちゃんを遠ざけようとしました。

ライルは攻撃的な犬ではないそうですし、表情やボディランゲージにも攻撃的な様子は見られませんでした。奥さんは初めてのお子さんということもあって、少々過敏に反応してしまっているように思いました。私は、ライルは赤ちゃんと仲良くなれると判断しました。

まずは奥さんの、ライルに対する不信感を払拭してもらうために、ベースプログラムを実施してもらいました。まずは奥さんがしつかりとライルをコントロールできるようになることが、ライルを信じてもらうために大事だと考えたからです。

今まで多くの赤ちゃん&犬たちのケースを扱ってきましたが、その様子を見ているうちに「犬たちはもしかしたら、子育てに参加したいのかもしれない」と感じるようになりました。メスはとくにそうです!

実際、家で私が床に何かを広げて作業をしようとすると、わが家の犬たちは全員やってきて、手伝ってくれます(笑)。その様子はまるで「みんなで一緒に行動する」というルールがあるかのようです。そのことからも、私は「子育ては犬と一緒に」というポリシーを持つようになりました。

 

犬とのボール遊び

愛犬が「投げて」とボールを持ってきたら、飼い主さんは投げてもいいのでしょうか?

愛犬との関係がうまくいっていて、何の不満もないという場合には、まったく問題ないと思います。わが家では、私が気が向いたときは投げてやるし、向かないときは投げません。決定権は私にあります。愛犬の態度に少しでも不満がある場合には、投げないことをお勧めします。

トイプードルのアンソニーの飼い主さんは、「しつけの本はたくさん読んだし、インターネットでもさんざん調べた。こんなに真剣にしつけに取り組んでいるのに、どうして愛犬は自分の言うことを聞いてくれないのだろう」とお悩みでした。カウンセリングが済んでから、さっそく「オイデ」、「オスワリ」、「マテ」をやっていただきました。

「できるかなあ~、はい、アンくん、オスワリ! あれえ、オスワリだよ、オスワリ!いつもはやるんですけどね、今日はやらないなあ。お客さんがいるからかな。オスワリ!オスワリだよ、オスワリ! オースーワー
リー!」

だんだん焦ってくる飼い主さん。アンソニーは飼い主さんが必死になればなるほどうれしそうにしっぽを振っています。自分に注目してくれているのが楽しいのでしょう。でも、座る気配はありません。しばらくするとどこかへ走っていき、ボールをくわえて戻って来ました。すると飼い主さんは、「えー、ボールがやりたいの?しようがないなあ」とボール投げを始めてしまいました。

アンソニーの通訳をすると、「お客さんが来てるのにどうして遊んでくれないの?スワレって?どうして今?そんなに必死になって、どうしたの?そうだ、ボール投げをしよう!そっちのが楽しいよ」。そんなメッセージを送ったのでしょう。決定権はアンソニーにありました。

「オスワリ」の指示を出したのに、アンソニーが持ってきたボールを投げてやったことで、アンソニーが指示に従わないことを許可してしまいました。アンソニーは「指示には従わなくてもよい。しかも、ボール投げをしたかったらそれを要求してよい」と学習したことになりました。次回も従いたくないときは従わず、またボールを持ってくるかもしれません。

アンソニーの飼い主さんへの具体的なアドバイスとしては、まずはきちんと決定権を取り返すため、ベースプログラムに取り組んでもらいました。また、「オスワリ」や「マテ」などの簡単なトレーニングを、毎日2~3分やってもらうようにお願いしました。これは、オスワリさせられるようにすることが目的です。

トレーニングを行うときの注意事項ですが、指示を出すのは一度だけ。従ってくれたらおやつを与えますが、従わなかったらトレーニングを中断してしばらく無視します。従わなくても叱らないこと。「ダメじゃないか」などと声もかけないほうがよいでしょう。「やらないのならおやつはあげないよ」くらいの態度で十分です。

とくにこの飼い主さんは犬の要求に応えやすいということで、十分注意していただくことにしました。たとえば、アンソニーが「ボールを投げて!」と要求したら無視して、あきらめたころに「ボール投げをしよう」と誘って投げてやるのです。

インターネットであれこれ調べたしつけ法をいったんすべて白紙にしていただき、新しいルールを実施してから3週間ほど経ったころ、飼い主さんからメールをいただきました。

「言うことをきかないアンソニーもかわいかったのですが、言うことをきくアンソニーはもっとかわいくなりました。犬たちは必ず応えてくれることを実感しました。アンソニーからは、不思議と前よりも好かれていると感じます。しつけっておもしろいですね!」

悩んでいた飼い主さんが、しつけを「楽しい」、「おもしろい」と思っていただけるようになるのは、私にとっても本当にうれしいことです。

 

「お仕置きでハウス」は効果があるの?

「ハウスをお仕置きで使うと、ハウスに入るのが嫌いになるつて聞いたんですが」と、飼い主さんによく聞かれます。でも、私にはそうは思えないのです。

わが家では犬が悪いことをしたらハウスに入れます。その必要はだいぶなくなりましたが、今でもたまにやります。でも留守番で八ウスに入れるときは、みんな喜んでハウスに飛び込みます。それは、ひとかけらのおやつがもらえるからです。

トイプードルの『マリオ』のハウスは、居場所としてではなく、悪いことをしたときに閉じこめられるためにありました。まさに「お仕置き部屋」だったのです。入れられたマリオが中で吠えると、飼い主さんは。グーで殴っていたそうです。マリオは飼い主さん以外の人を噛むことがありましたので、ハウスで管理する必要性を感じました。そこで、ハウストレーニングをやり直すことに。

まず、お仕置きでハウスに閉じ込めることをやめてもらい、グーで殴るのもやめていただきました。体罰を使っていたこともあり、飼い主さんとの正しい関係を作り直すために、ベースプログラムを実施してもらいました。

次に、ごはんは必ずハウスの中で与えてもらうようにしました。ハウスの扉は、最初はしばらく閉めないようにしてもらい、おやつをゲージの中に投げてやったり、おもちゃを投げ入れて取りに行かせたりして遊ぶようお願いしました。

1回目のレッスンを終えたある日、飼い主さんから画像が送られてきました。それはマリオが扉が開いているゲージの中に入り、心地良さそうに丸まって寝ている姿でした。さて、マリオがお仕置きに使われていたハウスに、自ら入れるようになった証であるこの画像が届いたのは、最初のレッスンが終わってからどのくらい経ってからでしょうか?

1年?半年?1ヵ月?1週間? 答えは4日です。悪いことをしたら、ハウスに入れて反省させるのは、とても良い方法だと思っています。今していることができなくなるという「Time Up(時間切れ)」が罰なので、罰を継続する必要はなく、その時間切れの瞬間だけで十分。閉じ込めた部屋の中で罰が続くわけではありません。ハウスには自分のベッドがあり、トイレもあって、水やおもちゃもあったりして、犬にとっては快適な場所です。

「お仕置きで使ってしまったので愛犬がなかなか自分からハウスに入ってくれなくなった」とお悩みの飼い主さんは、こちらの指示で入れるときは、とっておきのおやつで誘導するようにしてください。ゆでたササミ、レバー、チーズなど、犬にとって魅力的なもので試してみてください。

少し話がそれますが、私は子どものころ悪さをしてはお仕置きで物置に入れられました。物置は狭いし、外から電気は消されるし、かなり怖かったので泣きわめいて許しを乞いましたが、母は私の「要求泣き」に応えてはくれませんでした。「宿題が終わるまでは部屋から出てはダメ」という罰もありました。

自分の部屋なので泣いてわめいたりはしませんが、部屋にテレビはないし、お腹が空いても食べるものはありません。終わるまで夕食にありつけないこともありました。しかし、だからといって自分の部屋を嫌いになることはありませんでした。

この理屈から考えると、お仕置きで犬を八ウスに閉じ込めても、ハウスを嫌いになることはないと思うのです。動物が閉じ込められることに対して嫌悪感を抱くのは当たり前だと思いますが、危険はなく、恐怖を感じる必要もないと理解し、あきらめることを覚えたら怖がらずに入っていられるものだと思います。

愛犬の問題行動に対して、イライラしたり声を荒らげたりするエネルギーを使うなら、スマートに淡々とハウスに入れてしまうのがいいと私は思うのですが、いかがでしょうか。